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専門医に聞く、新規2型糖尿病治療薬の使い方(上)(医療介護CBニュース)

清野裕さん(糖尿病専門医、関西電力病院長)

 昨年12月の経口薬の発売を皮切りに、新しい2型糖尿病治療薬が続々と登場しようとしている。いずれも、消化管から出るインクレチンというホルモンの1つのGLP-1の働きに注目し、これまでの薬とは異なる作用メカニズムでインスリンの分泌を促進して血糖値を下げる薬剤だ。メーカーによると、単剤では既存薬で問題とされる低血糖や体重増加のリスクが少なく、動物実験ではインスリン分泌に欠かせない膵臓のβ細胞を保護する可能性も確認されているという。
 このような特長から、各方面で「夢のような薬」との期待の声も聞こえてくる一方で、清野さんは、あくまで「新しい作用メカニズムを持つ薬」であり、「2型糖尿病の万能薬ではない」と強調する。
 新規薬で注意すべきことは何か。どのように使えばいいのか―。国内インクレチン研究の第一人者であり、開発段階から新薬にかかわっている清野さんに聞いた。

―初めに、2型糖尿病の薬物治療の現状と課題を教えてください。

 現在の日本の2型糖尿病の薬物治療は、インスリンを分泌させるSU薬が主流で、患者の7割がこれを飲んでいます。これがベースにあって、インスリンの働きを少し改善するような薬を加えたり、食後血糖の上昇を抑えるような薬を加えたり、いろいろ工夫しています。
 というのは、インスリン分泌を直接刺激するような薬は、多く使えば効き過ぎて低血糖を起こすし、少なく使えば食後の血糖がものすごく上がってしまう。あるいは、インスリンも日本の患者の多くに適応になりますが、そういう分泌系のものを使うと体重が増える。また、体重増と低血糖に加えて、どんな薬でも使っているうちに薬そのものが効かなくなります。どんどん薬の量が増える、種類が増える、その上体重が増える、そういうことが重なり、長くその薬が効いてくれないというのも現実の問題です。
 インスリンの分泌能力が低い日本人には、▽膵臓のインスリンを出すβ細胞が守られる▽低血糖がない▽体重が増えない―の3つの要件を満たしてインスリン分泌を促進できるというのが、特に求められる薬ですね。

―そんな中、新しい作用メカニズムを持つ治療薬が登場しています。先生は開発の段階から臨床試験で処方されていますが、これらの治療薬をどのように評価しますか。

 近視眼的に見れば、上に挙げた3つの要件を満たす可能性があります。とはいえ、万能薬ではありません。どんな重症患者にも使えるわけではありませんし、食事や運動に関して今まで通り守っていないと、多く食べたらすぐ悪くなります。食事・運動療法にきちんと取り組むこと、これが第一です。また、わたしは実際に使っていますが、あまり効果がない人がいるのも事実です。
 わたしは初期から使うことをお勧めしています。高齢者も単剤なら低血糖がないので安心です。しかし、経口薬ならHbA1c値の減少も1%弱とゆっくりで、かつ単剤の使用には限界がありますし、既に糖尿病になっている人も何とかしなければいけません。その場合は、既存薬と併用して使わなければいけなくなります。
 非常に不思議なのは、SU薬が効かなかった人に対して、SU薬と新規薬を併用すると非常によく効く例が多く、SU薬の作用を回復させることによると考えられます。

―注射薬でも新しい薬が登場しようとしています。
 注射薬はかなり強力ですから、ある程度インスリンを打たないといけないような人の何割かが、それに切り替えられる可能性があります。そうすると、インスリンのように量の調節はないですし、単剤で使う限り低血糖はなくなるでしょう。

―吐き気などの副作用があると聞きます。安全性の面で注意することはありますか。
 インクレチンの作用が強いと消化管運動の抑制があります。膵臓へ作用すると、やはり外分泌の貯留などが起こって、理論的には吐き気や嘔吐が起こります。膵炎については、日本の臨床試験ではなかったですね。
 ただ、臨床と実際では患者さんの状態が違います。臨床試験の人は、選ばれた方々ですから。実際にはお酒を飲んだり、膵臓がものすごく悪かったりする人にも使われる可能性がありますよね。起こり得る副作用は常に念頭に置いていなければいけません。
 また、新しい薬ならどんな薬でも注意が必要です。「夢の薬」なんていうものは存在のしようもなくて、そんなことになったら医者なんて不要です。新しい薬は従来の薬に比べて、これまでに紹介した3つの特長がある。それで、インスリン分泌能力の低いアジア人、日本人の糖尿病の特徴を考えると、非常に適している可能性がある。だからある種の期待を持って迎えられているわけですが、それも適正、適切な治療があってこその話です。

―薬の特長を生かすにはどうすればよいでしょうか。
 まず単独でどれくらい効果があるかを確かめる。その上で、次に併用を考える。組み合わせは慎重に。SU薬の量を多く使っているような人の併用はSU薬の減量などに注意しないといけません。また、特に高齢者や腎臓の機能が少しでも悪いような人に処方する場合には、専門医にぜひコンサルトをしていただきたいと思います。


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